オーバーホールと買い替え、どちらがお得なのか判断基準を知って慎重に検討しましょう。
エンジンのオーバーホールとは
エンジンのオーバーホールとは、エンジンを完全に分解して点検し、必要な修理や部品交換を行い、再び組み立てる作業のことを指します。このプロセスはエンジンの性能を回復させ、寿命を延ばすために行われます。つまり、エンジンを新品の時の状態に戻そうとすることがオーバーホールの目的となります。
自動車整備の作業の中でエンジンのオーバーホールは、特にコストがかかります。工賃に加え、各パーツの部品代などで30万円ほど、さらにピストンやクランクといった部分の交換になると50万円~100万円前後の費用がかかる場合もあります。
エンジンのオーバーホールが必要な状態とは
一般的にエンジンの寿命は、走行距離30〜50万キロといわれています。しかしそれ以前に以下のような症状がみられる場合にはオーバーホールが必要な状態となっている可能性があります。
- オイル消費が悪い場合
- マフラーから白い煙が出る場合
- 異音がする
- 登坂や加速が鈍い
オーバーホールの手順
オーバーホールは一般的に以下の手順でおこなわれます。
順 | 項目 | 作業内容 |
---|---|---|
1 | エンジンの取り外し | エンジンを車両から取り外します。 |
2 | 分解 | エンジンを分解し、各部品を取り外します。 |
3 | 点検と測定 | 各部品を詳細に点検し、摩耗や損傷の程度を測定します。 |
4 | 洗浄 | 部品を徹底的に洗浄します。 |
5 | 部品交換 | 摩耗や損傷が見られる部品を新しいものに交換します。通常、ピストンリング、ベアリング、シール、ガスケットなどが交換されます。 |
6 | 組み立て | エンジンを再び組み立てます。この際、適切なトルクでボルトを締め付けるなど、正確な手順に従います。 |
7 | テスト | 再組み立て後、エンジンをテストして正常に動作することを確認します。 |
オーバーホールのメリット・デメリット
エンジンのオーバーホールにはメリットとデメリットがあります。それらをよく理解したうえで、オーバーホールをおこなうかどうかを考えてみましょう。
メリット
エンジンの回復
エンジンを解体し、清掃や整備、部品の交換など必要な作業をおこなうため新品同様のエンジン性能を取り戻すことができます。エンジンが新品同様に回復することで、寿命ももびることになります。
点検も兼ねる
オーバーホールをおこなうことはエンジンを取り出すといった作業があるため、車全体の整備や点検も兼ねることができます。トラブルのもとになりそうな部分の早期発見にもつながります。
デメリット
費用がかかる
費用は、車種によっても違います。また交換するパーツが多い場合には費用がかさむことになります。またオーバーホールは知識と技術を必要とするためオーバーホールをおこなう整備士も減りつつあることも費用が高くなる要因のひとつです。
期間がかかる
エンジンを分解するということは、それなりの時間がかかることになります。オーバーホールの期間は、エンジンの状態、部品の交換の程度にもよりますが1~2ヵ月程度かかる場合もあるため代車が必要となる場合もあります。
オーバーホールの費用相場
エンジンのオーバーホールの費用は主に、作業代と部品代になります。作業代には、エンジンの分解、洗浄、積み下ろし、組み立て作業などが含まれます。
あとはエンジンの状態と交換パーツの内容、オーバーホールを依頼する業者によって変わってきます。一般的な直列4気筒エンジンでは、30万円〜というのが相場といえます。
またエンジンオーバーホールほど金額をかけたくないという場合には、中古エンジンの載せ替えという方法もあります。
買い替えとオーバーホールどっちがお得?
オーバーホールをおこなうには、それなりの費用がかかることがわかりました。それでは、エンジンに異常を感じた場合、買い替えとオーバーホールではどちらがお得といえるのでしょうか。一般的な車の寿命は以下のようになります。
- 走行距離が10~15万km程度
- 使用年数が10年~13年程度
- 税金が重課のタイミングとなる13年(ガソリン車の場合登録から13年が経過すると重課となり、税額が上がります)
上記の条件は、車を修理して乗り続けるべきか、買い替えるべきなのか判断基準のひとつになります。
オーバーホールがお得な場合
メーカーの特別保証でまかなえる場合
保証条件については、メンテナンスノートによって点検・整備の履歴が残っていることが保証の対象になります。取扱説明書等に従って正しい利用や点検を実施している自動車が保証を受けられます。
車に愛着がある
いま乗っている車に愛着があったり、同じ車に長い期間乗り続けるスタイルを好んだりする場合は、買い替えるよりもオーナーホールすることをおすすめします。車の年式が比較的新しい場合や車検の有効期間がまだ大分残っている場合は特にそう言えます。
買い替えがお得な場合
使用年数が10年以上、走行距離が10万kmを超えている
10年以上経過した車、走行距離が10万kmを超えている場合は、交換部品やメンテナンス・調整すべき部品が増えます。そのため、買い替え費用より修理費用のほうが高いケースが増えます。修理費用が高額である、新しい車に乗り換えたほうがメンテナンスが楽になるという場合は、買い替えがおすすめです。
買い替え価格と修理費用に大きな差がない
修理費用の見積もりを出したときに、買い替え費用との差が小さい場合には、買い替えを検討するとよいでしょう。同じような費用であれば、買い替えた車のほうがより安全に長く乗り続けることができその後の維持費用も安くすむでしょう。
まとめ
オーバーホールは時間とコストがかかる作業ですが、エンジンの性能を回復させ、寿命をのばすために有効といえます。また、特に古い車両やクラシックカーの所有者にとっては、エンジンオーバーホールは非常に価値のあるメンテナンスです。
しかしながら費用は、エンジンの状態やオーバーホールの依頼先などによって大きく異なる場合があります。オーバーホールをする際は予算や車の状態などを見極めて検討するようにしましょう。